柱を見せる和室、柱を見せない和室
こんにちは、辰川です。
近年の注文住宅は、リビングルームをはじめとして洋間主体の間取りになってきました。
昔の家なら、一軒の家には、和室が2部屋か、3部屋はあったものです。
ところが最近、若い人にも和室が見直されてきています。
やはり、日本人には、畳の感触がどこか心を落ち着つかせてくれるという感覚があるのかも知れません。
それに、親が訪ねてきてくれたとき、押入れにある布団を出せば、泊まってもらうこともできますね。
柱のある和室と、柱のない和室
ところで、和室のつくり方によっては、柱があったり、無かったするのにお気づきでしょうか?
正確にいえば、柱はあるのですが、部屋から柱が見えているか、見えていないか、の違いですが・・
(上の写真)少し専門的になりますが、柱を見せる造り方を「真壁(しんかべ)つくり」と呼びます。
これは従来からある日本家屋の建て方で、和室の柱1本にも、木目を綺麗に見せるよう気を配らねばなりません。
一方、(上の写真)柱を見せない造り方を「大壁(おおかべ)つくり」と呼びます。
柱は無いのは、壁の内側に隠れているからですが、「柱が見せない=値段のはる柱を使わなくてよい」ので木材のコストは抑えられます。
構造体の違いによっても決まる
木造で家を建てるといえば、大概は「軸組み工法」によります。
軸組み工法とは、柱(縦軸)と梁(横軸)の材木で組んでつくるので、「軸組み」と呼ばれます。
大工さんが若い時分から修行を積んで覚えるのが、この軸組みによる建て方です。
そのかわり、一人前になるまでに長い年月がかかります。
軸組みの良さは何といっても、家の強度を確保しながら、大きな開口部(窓や玄関)を設けられること。
部屋同士をくっつけたり、あるいは部屋を増やしたりし易いので、改築の自由度も高くなります。
一方、柱や梁など使わずに、壁(パネル)を使って、家を建てるのが「ツーバイフォー工法」です。
ツーバイ工法は、北米から入ってきた家の建て方ですが、パネルによって建物の強度を確保しています。
壁を抜くと強度がもたないので、ツーバイは増改築が苦手です。
ツーバイでも、もちろん和室はつくれますが、柱自体がないので「大壁づくり」となります。
もし、その和室に柱があったら、それは装飾用の「付け柱」であり、構造的に意味はありません。
そのほか、鉄骨造りや鉄筋コンクリート造りの和室もまた、大壁仕上げにならざるを得ませんから、こちらも柱があれば、付け柱となります。
真壁と大壁ではどちらがよい?
では一体、和室は柱を見せる真壁つくりと、柱を見せない大壁つくりとでは、どちらが住み手にとってよいのでしょうか?
柱はあったほうがよいか、無いほうがよいかは、その家で暮らす人の価値観によります。
例えば、和室を茶道や華道など趣味の空間として使うのなら、断然、本物の柱を使って建てるほうが雰囲気がでます。
その反対に、和室をお洒落た空間として捉え、リビングと隣り合って使いたいというのなら、ハウスメーカーのプレハブ住宅でも十分です。
では、業者側からすれば、どうなのでしょうか?
効率を最優先したい業者にとっては、真壁つくりよりも大壁つくりのほうがよほど楽なはず。
これには、2つの理由があります。
1つは真壁の和室をつくれる熟練の大工は数少ないということと、和室に使う柱は一般に高価である。
もう1つは、柱のある本格的な和室よりも、お洒落な和室の雰囲気を求める顧客のほうが多い。
つまり、和室といっても本格的なものは要らないが、そのテイストは欲しいという顧客と、建築コストをあまり掛けたくない業者の利害がうまく一致したといえなくもありませんね。
ところで、ここ数年、若い世帯が日本家屋の良さ、和室の良さにようやく気づきはじめたようです。
これって、なかなか喜ぶべきことだと思えてきます。
それではまた。
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